公益財団法人 日伊音楽協会からのメッセージ
日伊音楽協会は、1964(昭和39)年5月15日に設立されました。協会が設立された1960年代当時、日本ではドイツ音楽が偏重された時代で、イタリア・オペラは録音でしか聴くことができず、数年に一度、イタリア歌劇団の公演が日本で観ることが出来るようになり始めた時代でした。そのような時代に、イタリア音楽に熱い情熱を傾ける演奏家、オペラ歌手たちにより設立されたのがこの協会です。会長は、初代の藤原義江から、下八川圭祐、奥田良三といった声楽家、チェロ奏者の吉田貴壽、そしてテノールの五十嵐喜芳、バスの岡村喬生に至る日本のクラシック音楽、特にオペラ界を牽引してきた人々が務めてきました。

協会は設立の目的を「日伊両国間の音楽資料の交換および音楽家の交流の促進をはかることにより、両国間の音楽的理解と協力の増進を図る」と掲げました。協会の会員は、声楽家がその大部分を占め日本におけるイタリア音楽、とくにイタリア・オペラの普及や日本人オペラ歌手の育成に大きく寄与してきました。協会の大きな事業である「日伊声楽コンコルソ」は第5回から読売新聞社が主催者として加わり、その後は共催で行われてきました。課題曲、自由曲ともイタリアのオペラ・アリア並びに歌曲のみで競われ、他の大多数のコンクールが日本歌曲も含めた複数の原語による課題曲を設定しているのに対し、あくまでイタリア・オペラに特化した極めて珍しいコンクールであります。2013年で49回となったこのコンクールは、歴代優勝者の中から、イタリア・オペラのスペシャリストを多く輩出してきました。第1回特賞の松本美和子にはじまるコンコルソ入賞者は、林康子(第5回)、出口正子(第10回)、故・山路芳久(第12回)、市原多朗(第15回)ら錚々たる顔ぶれで、このコンコルソからミラノ・スカラ座、ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場、英国国立歌劇場(コヴェントガーデン)、パリ・オペラ座、ウィーン国立歌劇場など、世界的に著名な歌劇場へと日本人オペラ歌手が巣立って行きました。近年では、ソプラノの砂川涼子(第34回)、木下美穂子(第37回)、テノールの中島康晴(第36回)、村上敏明(第40回)、バリトンの谷友博(第35回)、須藤慎吾(第42回)らが、オペラ界でその活躍の場を拡げつつあります。コンコルソは長年、東京で行われてきましたが、広く若手にチャンスを与えるという趣旨から、2008年から大阪でも予選を行っています。

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